独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
くしゃりと前髪をかき上げながら、しみじみとそんなこと言う。
私はすぐにお見合いを止めてくれたあの時のことを言ってるのだと理解する。
「私は助かりました。あのままでは好きでもない人と結婚させられるところだったので、行動を起こしてくれた遼には、本当に感謝しかないです」
「そうか。息子が役に立ったのなら、良かった」
遼のお父さんは目を細め、本当に嬉しそうに笑みを浮かべた。
「遼はね、昔はライバルに負けるわけにはいかないと勉強ばかりしていたが、今ではすっかり仕事人間になってしまっていて……あの通り、たくさん来ている見合いの話にもまったく興味を示さないから、結婚などまだまだ先の話かと思っていたけれど」
頷きながら遼のお父さんが書棚を見た。
多くの本が綺麗に並べられている中、一部だけ雑然と横置きで重ねられている箇所があった。
五、六冊くらいの厚みはあるだろうか。まさにその重ね置かれているものが見合い写真だと気付けば、以前遼と交わした会話を思い出す。
彼は見合いはしたことがないと言っていた。けれどしていないだけで、見合いの話は彼の元にたくさん舞い込んでいたようだ。