独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
彼がそれらの話に見向きもしていないことを分かっていても、やっぱり嫉妬で胸が痛んでしまう。
彼の父親の言葉通り、いずれ遼は結婚するだろう。
それは私ではなく、重ねられた見合い写真の中にいる女性かもしれないし、これから出会う女性かもしれない。
その時遼は、両家の親や倉渕物産の社員はもちろんのこと、多くの人たちからたくさんの祝福を受け、花嫁の隣で幸せそうに笑うのだろう。
「あぁそうだ。娘の花澄がね、君の話ばかりしているよ。なんでも君に憧れているらしく……」
遼のお父さんの言葉が、徐々に耳に入ってこなくなる。
歓迎するとは言ってくれたけれど、社長の立場として別の思いもあるだろう。
立派な後ろ盾があるだろう見合い相手たちと、後ろ盾を捨ててしまった上に揉め事の火種になる可能性のある私。
倉渕物産の跡取り息子の結婚相手としてどちらがふさわしいかは、考えるまでもなく明らかである。
遼が好き。
その思いは強くなっていく一方なのに、現実を知れば足元がぐらついてしまう。
怖くて身動きがとれない。
これからどうすべきなのか、それを考える事すら怖かった。
+ + +
「……失礼します」