独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「誰に?」と聞かれるのが怖くて、私はすばやく言葉をかぶせた。
「……またあとで。楽しみにしてるね」
男性社員が二人ほど、受付付近で足を止め遼が来るのを待っている。
そのふたりに聞こえないくらいの小さな声で、私は自分の思いを追加させる。
閉まりかけたエレベーターの扉を慌てて手で押さえつつ、それに乗り込もうとしたけれど……できなかった。
遼に腕を掴まれ、少し強引に引き戻されたからだ。
「コーヒー、どこに届けた?」
遼の口調は少し厳しくも聞こえたけれど、その表情は焦っているかのようにも見えた。
今私が言わなくても、遼は私が誰に呼ばれここに来たのかを、社長や中條さんから知ることになるだろう。
言い難くはあったけれど、私は正直に答えた。
「……社長室に届けました」
「父さんに?」
「……はい」
返事をしながら、視線が落ちていく。
遼も何も言ってこない。沈黙で気まずさだけが膨らんでいく。
待っている男性社員たちに「倉渕専務、どうしましたか?」と声をかけられ、私は少しだけ後ずさりする。
倉渕物産の中には、西沖グループのことをよく思っていない人たちがいる。