独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
遼を待っているふたりもそうだったとしたら。
遼が引き止めている女が、西沖の娘だと知ったら……。
急に恐くなってくる。私はここにいちゃいけないと、強く感じてしまう。
「私、行きます」
身体を後ろに引き、自分を掴んでいる彼の手をなんとか振り払おうとすれば、逆に彼の手の力が強くなっていく。放してもらえなかった。
「こら、逃げるな」
「……でも」
ちらりと、こちらの様子をうかがっている男性社員たちへ目を向けると、遼は小さくため息を吐く。
「先に戻っててくれ」
そしてすぐに男性社員たちにそう言葉をかけた。
「分かりました」と彼らが立ち去れば、一気に場が静寂に包み込まれた。
少しの間を置いてから、遼が私を掴む手の力を抜いた。つられて私も強張っていた肩の力を抜く。
「父さんは麻莉に何の用?」
「だからコーヒーを」
「それほどコーヒーを飲まないのに、わざわざ届けさせるか? 目的はコーヒーではなく麻莉。それくらい俺にもわかる」
そんな事実を突きつけられてしまえば、私には返せる言葉などない。
そっと、遼の指先が私の頬に触れた。反射的に顔をあげれば、綺麗な瞳がすぐそこにあった。