独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
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仕事上でちょっとしたトラブルがあったらしく、結局、夜に会うという遼との約束は叶わなかった。
店に戻ってしばらく経ってから、遼から「ごめん」と電話があったのだ。
倉渕物産で別れ際、遼を呼びに来た男性社員の表情はとても焦って見えたし、仕事ならば仕方がないと私はすぐに納得する。
今夜のディナーの候補としていくつか店をピックアップしておいたのにとご機嫌斜めな遼の声を聞いているだけで、私の中にあった寂しさが緩和されていくのを感じた。
次の約束も近いうちに決めようと言葉を交わしたのち、電話を切ったのだ。
だから今夜は自宅でひとりゆっくりする予定だったのだけれど……そうならなかった。
「ねぇ、お姉ちゃん。電話してみてよ! そしたら遼先輩、仕事帰りにここに寄ってくれるかもしれないじゃん!」
なぜか。妹の美紀から電話がかかってきて、呼び出しをくらってしまったのだ。
仕事帰りに立ち寄り、思い思いにくつろいでいる人々の姿が多く見られるコーヒーショップで、私はうんざりとした気分で席に座っている。
「何度も言ってるけど、仕事が立て込んでいて今日は会えないって言われてるの。出張から帰ってきたばかりで疲れてもいるだろうし、こんな状況でそんな無理言えないよ」
「えー。逆に彼女の顔を見たら、疲れなんて吹き飛ぶもんじゃないの? お姉ちゃん、ちゃんと遼先輩の心の支えになれてる?」
その言い方にカチンときて、私は眉を潜めた。
この店に呼び出され、かれこれ一時間、美紀はずっとこんな感じである。
そして今私は、美紀が遼の出張先に現れたことを包み隠さず教えてくれた中條さんに、心の底から感謝していた。