独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
偏見かもしれないけれど、浮かべる笑みから軽薄さや高慢さが滲み出ているように思えてならない。
とてもじゃないけど、母の言うような人望の厚い好青年には見えなかった。
それに、彼の顔には見覚えはないけれど、榊商事という社名には何度か耳にしたことがある。
榊商事は父の会社である西沖グループの主要取引先であり、なおかつ、プライベートでも付き合いがあったと記憶している。
この話の裏で、親たちの思惑が働いているのは間違いない。
「嫌です! 私は彼と結婚なんてしません!」
椅子から立ち上がり、大きな声ではっきり言えば、母が呆れたように短く笑った。
「いえ。あなたはするのよ。彼と結婚するの」
私の言うことを聞きなさい。そんな響きを伴いながら、母が強い口調で言い返してきた。
大きく首を横に振って拒否すれば、母の表情が険しさを増していく。
「分かってるでしょ? どんなに抗っても、あなたは西沖家の一員なのよ。家のためを思って、結婚なさい」
有無を言わさぬような迫力を伴いながら、母親が言い放つ。
例え家を離れていたとしても、西沖家の一員には違いない。だから、会社のために我慢しろと言いたいのだろう。