独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
美紀はにこりと意味深な笑み浮かべ、楽しそうな笑い声をあげた。
続けて顎をそらし見下すような顔もされ、私はムッと眉根を寄せる。
「だったら、近いうちにお姉ちゃんは遼先輩に捨てられるね」
「いきなり何言って」
「パパね、遼先輩とお姉ちゃんが結婚するのは本気で嫌みたいで、倉渕物産と取引のある会社にいろいろ圧力かけてるみたいだよ」
「……それって、本当なの?」
美紀の言葉が、数時間前に倉渕物産で目にした光景を、私の中で呼び起こす。
遼を呼びに来た男性の焦った顔が、急に深刻さを帯びていく。
言葉を無くしてしまった私に対し、美紀がむっと顔をしかめた。
「言っておくけど、これはすべてお姉ちゃんが悪いんだからね。お姉ちゃんがパパとママの言うことをちゃんと聞かないで、ずっと自分勝手なことばっかりしてきた報いだよ!」
私が自分勝手と言うならば、嫌がる私を無理やり結婚させようとしていた父も母も自分勝手ではないだろうか。
それに父の怒りの原因は、私の我がままだけではない。
父が持つ私の母と遼のお父さんとの過去の記憶が、より大きく影響しているはずだ。
反論はいくつも心をよぎっていくというのに、父が倉渕物産に圧力をかけているという事実が重すぎて、何も言葉にできなかった。