独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
会えたことが嬉しい、それだけじゃなかった。
美紀の話を聞いて大きくなっていた不安が、いつもと変わらない遼の顔を目にした瞬間、私の中で綺麗に砕け散ったのだ。
すべてを包み込むような眼差しからは、彼がこの関係を終わらせるために私に会いに来たわけではないことが温かさと共に伝わってくる。
まだ私にもチャンスが残っている。
小さな希望を失わずに済んだことにホッと息を吐いたけれど、遼が驚きで目を大きくさせ自分を見つめていることに気付けば、彼との温度差をしっかりと感じ取ってしまう。
遼には恋人のふりをしてもらっているだけだという現実を改めて突きつけられたようで、徐々に気まずさが込み上げてくる。
彼に抱きついてしまったことも、会いたかったという愛しい思いを素直に口にしてしまったことも、恥ずかしくてしかたがない。
「本当にごめん。ちょっと落ち着きます」
慌てて彼から身体を離そうとしたけれど、私の腰元に添えられていた彼の手に、引き寄せられてしまう。
「いいよこのままで。俺の腕の中でもうしばらく嬉しがってて」
耳元で、しかもとびきり甘い声で囁きかけられ、頬が一気に熱くなる。
ほんの数秒迷ったあと、私は彼の背中へと手を戻し、もう一度だけぎゅっと抱きついた。