独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます

指先で私の髪の毛先をすくい上げ、彼が身を寄せてくる。

至近距離には彼の綺麗な顔がある。

薄く笑みを浮かべた唇で、私の髪に口づけを落とす。

こうやって私に触れたかったのだと、彼が行動でその思いを伝えてくる。

細長い指先から毛先がするりと落ちていけば、別のものを望むように、彼の視線が私を捉えた。

彼の手が自分の頬に触れただけで、鼓動が高鳴っていく。

綺麗な瞳が私の唇を熱く見つめている。

指先で唇をなぞられれば、身体が甘く痺れだす。


「麻莉」


欲しがるような甘い響きに、身体が熱くなっていく。


「……待って」


互いの唇と唇が重なる寸前で、私は僅かに身を引いた。


「遼に、聞いて欲しいことがあるの」

「え?……あぁ。話はあとで、だったな。なんだ?」


緊張感もあわさり、さらに鼓動が速くなっていく。

怖いけど、伝えるなら今しかない。

深呼吸したのち、私は遼の腕を掴んだ。


「遼が力を貸してくれたおかげで、私は榊さんと結婚しなくて済みました。ありがとう……だからもうこれ以上、遼は私の恋人のふりをし続けなくても良いんだよ」



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