独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
自分が好きになれるか分からないし、相手に好きになってもらえるかも分からないというのに、こんな形で結婚なんてしたくない。
助けを求め視線を送れば、父と目が合った。
こんなことやめさせて欲しいと訴えるべく口を開いたその瞬間、父は手元の新聞へと視線を落としてしまった。
「……お父さん」
呼びかけても、父は私を見ようとしない。
父だけは私の味方でいて欲しかった。涙で視界が滲み、切なさで心が痛んだ。
「麻莉、いいわね。見合いは明日よ。今日はこの家に泊まりなさい。分かったわね」
「そんなのいや。絶対にいや。私は言いなりになんてならない。帰ります」
怒りで声が震えている。もうこんなところに居られない。本当になんで来てしまったのだろうか。
部屋から、そしてこの家から出るべく、私は歩き出す。
バッグを預けていたことを思い出し斉木さんの姿を探せば、足が止まってしまった。
彼女はドアの横に控えていたけれど、その手に何も持っていなかったのだ。
「なんて反抗的なの。今まで誰のおかげで生きてこれたと思ってるのよ。恩知らずなのは、母親譲りね」
背後で、母がいまいましげにそう呟いた。私は奥歯を噛みしめ、拳を握りしめる。