独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「行くぞ」
肩に回された手にそっと押され、私は遼と共に歩き出す。
「遼先輩!」
しかし、すがるような美紀の声音に、私たちの足が止まる。
「西沖家の後ろ盾なんてないに等しいお姉ちゃんでは、遼先輩のプラスにはなれない。それにこのまま一緒いたら、パパの怒りだっておさまらない。それが何を意味してるか分かりますよね?」
私を傍に置き続けるかぎり、西沖グループによって倉渕物産は多方向から圧力をかけ続けられる。美紀はそう言いたいのだろう。
遼は私を選んだことを、本当に後悔しないだろうか。
幾度となく考えてきたことが、また頭をよぎっていく。
車が途切れ静まり返っている夜気の中、ふっと遼の笑い声が響いた。
「そっちこそ、誰に喧嘩売ってるのかよく考えた方が良い……まぁ、後悔したところで、もう遅いけどな」
風向きはすでに倉渕に有利な方向へと変わっている。
そんな風にもとれる言葉と、遼の自信たっぷりな微笑みに、美紀は悔しそうに唇を震わせる。
「麻莉」と私を呼ぶ声が合図となり、私は再び遼と一緒に歩き出す。
後ろで立ち尽くしているだろう美紀のことが気になり、肩越しに振り返り見ようとすると、肩に乗せているその手で彼が私を引き寄せた。
「……前だけ見て、俺についてきて」
私は頷き返し、視線を前に戻す。
遼が手を引いてくれるなら、何処へでもついて行く。
あなたが創る世界で、私は生きていきたい。