独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「連れて行って」
続けて彼女の口からそんな命令が飛びだせば、斉木さんともう一人の若い家政婦が、無表情のまま私に歩み寄ってきた。
彼女たちは私の両腕を捉え、そのまま強引に連れて行こうとする。
「やめて! 離して!」
振り払おうとしたけれど、だめだった。力が強すぎる。
「お見合いなんてしない。結婚なんて考えられない。名前じゃなくて、私を好きになってくれる人と結婚するから!」
抵抗を続けながら、声の限り私は叫んだ。
「まったく。これだから」
母は不愉快そうに、妹は可笑しそうに私を見ていて、そしてやっぱり父は、こんなに声を荒げているというのに、こちらを見ようともしなかった。
必死の叫びにも事態が好転することはなく、私はリビングから連れ出されたのだった。
+ + +
押し込まれたのは、以前自分が使っていた部屋だった。
どうしたら良いのか分からなくて、私はベッドに腰掛けたまま大きくため息を吐いた。
鍵がかかっているから、部屋から出ることは出来ない。このまま見合い時間になるその時まで、軟禁状態に置かれてしまうのだろうか。
どう頑張っても、ここから逃げ出せない。そんな気持ちになりながら、私はベッドに身体を倒した。