独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます

そして前回、美紀が来店した時の話をし始める。

美紀はよく両親と一緒にこの店に来ているようだ。

店に入れば、多くの店員たちから「いつもありがとうございます」と声がかかったし、この部屋に通された時だって、父は勝手知ったる様子だった。

対して、私はこの店に足を運んだことはない。

VIPルームに通されることだって、遼と入ったお店でなら経験があるけれど、家族と一緒の時にというのは一度もないのだ。


「麻莉お嬢様もこれからはぜひご一緒にいらしてくださいね」


西沖家の内情を知らないのだから仕方がないのだけれど、ぜひ次はご一緒と繰り返される店長の言葉を、私は曖昧に笑って流すことしかできなかった。


「センスのいい服だ。見栄えもする。それでいい」


決まりだと言うように父が言い放てば、店長が瞳を輝かせて「お色はどちらがよろしいですか?」と話を進めようとする。


「ちょっと待ってください。場が場なのだし、もう少し落ち着いた服装で行くべきじゃ?」


再び私にワンピースを合わせようとした店員の手をそっと押し返し、改めて父に訴えかけた。


「遼だけならまだしも、遼のお父さんだっているわけだし」



< 182 / 220 >

この作品をシェア

pagetop