独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
その一言で、店員たちは私が何の目的で服を買いに来たのかを察したのだろう。「まぁ」とさらに目を輝かせ始めた。
「それならそうともっと早く仰って下さればよかったのに。そうですね、でしたら……」
店長が店員にお薦めの服を集め持ってくるよう指示を出すのを見て、父が大きくため息を吐いた。早く帰りたそうな顔に見える。
「待て。それでいいと言ってるだろ。あちらから頼み込まれたから話をするだけだ。もちろん話をしたところで倉渕に娘をやるつもりはない」
「お父さん!」
「着飾ったお前を見せつけることができればそれでいい。あの生意気な親子の悔しがる顔を見られればなおいい」
私の隣にいる店員さんはくすくす笑いながら「娘を手放したくないのですね」と小声で話しかけてきたけれど、父の近くにいる店長さんは口元を強張らせている。
「失礼ですが、麻莉さんのお相手の男性は……あの……もしかして倉渕物産の……」
倉渕物産というワードが出た途端、父は盛大に顔をしかめた。
まさかと言った様子で、店長の視線がこちらに向けられたため、私は笑みを浮かべる気力もないまま小さく頷いた。