独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
その瞬間、店長は大きく目を見開いた。
「そっ、それは大変。倉渕様にも大変贔屓にしていただいておりますし、私どもも精一杯頑張らせていただきます」
店長の焦り具合で、店員も気づいたのだろう。再び先ほどと同じ指示を出されても、慌てふためくだけでなかなか次の行動に移れずにいる。
「おい! 倉渕だから何だっていうんだ! 服はそれでいい! 余計なことをするな!」
倉渕の名が出て慌てだした店員たちの様子も、父は気に入らないらしい。
父が苛立ちの声をあげ、収拾がつかなくなりそうな予感にため息を吐いた時、コンコンとノックが響いた。
「失礼します。美紀様がお見えになりました」
室内の様子に戸惑いを見せながら、戸口で店のスタッフがそう告げた。
父の様子を見るかぎり、美紀からは何も聞いていないのがわかり、私はすっかり安心しきってしまっていた。
だからこの突然の来訪に、パンチをくらったような気分にさせられてしまう。
「来ちゃった~!」
私の不安をよそに、スタッフの後ろから、美紀が顔を出した。
そして室内の様子を流し見した後、父に向かって膨れっ面をする。