独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
父のそばにいた店長がいつの間にか私の隣に立っていた。
先ほどまで傍にいた店員さんは、持っていたベロア生地のワンピースをハンガーラックにかけ、この場を離れていった。
このまま難を逃れられるかもと少しだけホッとしていたのだけれど、店長の手に再びそれがあるのを目にし、思わず口元を引きつらせてしまう。
「その時お顔を拝見させていただきましたが、とても素敵な方でした。麻莉さんもとても可愛らしい方ですし、おふたりはとてもお似合いのカップルですね」
「……ありがとうございます」
そう言ってもらえてとても嬉しい。本当はもっと嬉しがりたいのだけれど、父とそして何より美紀のいる前でそれはできなかった。
「本当ですよね。遼先輩、とっても素敵ですよね」
すぐ後ろから聞こえてきた声にギクリとしてしまう。
にこやかな顔で会話に割り込んできた美紀を、息をのんで見つめてしまう。
「でも、遼先輩が良いのは顔だけじゃないんですよ。頭も良いし、背が高くてスタイルも文句なしだし、運動神経だって抜群だし、それからちょっとクールなところも乙女心をくすぐられるって言うか」
嬉しそうに言葉を並べていく美紀に、店長はわずかに困惑の表情を覗かせる。