独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます

無理もない。自分の恋人のような口ぶりで、姉の恋人をべた褒めしているのだから。


「そっ、そんなに素敵な方なんですね。麻莉さんが羨ましいです」

「ほんと、お姉ちゃんが羨ましい」


無難な褒め言葉で会話を終わらせようとしたみたいだけれど、美紀に辛辣な声で続けられてしまい、店長はとうとう表情を失ってしまった。

もはやどんな言葉も怖くて言えなくなってしまったかのように、店長は唇を微かに震わせ、気まずそうに視線を行ったり来たりさせている。

その反応につまらなそうな顔をした後、美紀は「わぁ!」と明るく笑う。

そして店長が持っているオレンジ色のベロア生地のワンピースに手を伸ばす。


「お姉ちゃん、これ着ることにしたの? これすごく可愛いんですけど!」


なかば強引に美紀にワンピースを奪い取られてしまい、店長は微妙な笑みを浮かべている。

西沖家の買い物風景が見えたような気がした。ここに母がいても、きっと同じだろう。

父はずっと横柄な態度でソファーに座り、美紀はひたすら店員を振り回し、母が率先して美紀を褒め、それに店員がならう。きっとそんな感じだ。

私は気を取り直し、美紀に向かって首を横にふる。


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