独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
車窓の外には、倉渕親子と会う予定となっているハイクラスのホテルがそびえ立っている。
待ち合わせは午後二時。今はまだ正午を回ったばかりだ。
昨日の帰りがけに、身なりをきちんと整えられるよう人に頼んであるからと、父が言った。
だから私は、メイクやヘアのセットをしてもらうため、二時間ほど早くここに来るはめになったのだ。
私のことではあっても、父はどこまでも遼のお父さんに隙を見せたくないらしい。
タクシーを降り、ホテルの玄関をくぐり抜ける。
来いと指示された時間ぴったりの到着のため、すでに一階ロビーのどこかで斉木さんが私を待っているはずである。
彼女の姿を探しながらロビーを歩いていると、清掃員姿の女性が私の前を通りすぎようとし、足を止めた。つられて私も立ち止まる。
伏せていた顔をあげてニコリと笑いかけてきたその女性に、私は驚いてしまう。
茶目っ気たっぷりの顔で、喜多さんが目の前に立っていた。
その名を呼ぼうとした瞬間、「麻莉お嬢様」と喜多さんの後ろから声がかけられた。私に気付いた斉木さんがこちらに歩み寄ってくる。
「お待ちしておりました」