独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「遼から、道路が混んでて到着がギリギリになりそうって連絡が」
「そっか……遼先輩、本当にくるんだ」
突然、美紀の声のトーンが落ちたことにギクリとさせられる。嫌な予感がする。
「もう支度も済んだことだし、そろそろ行った方が。お父さんも待ってることだし」
このまま美紀と話をし続けるのは危険な気がした。
とにかくこの部屋を離れたい。
その一心で、ふたりに移動を提案した瞬間、ノック音が響き、返事を待たずに戸が開かれた。
「準備はまだか」
待ちくたびれたのか、不機嫌な様子で父が室内に入ってくる。すぐさま私は椅子から立ち上がった。
「できました。私も美紀も。もう行けます」
父は私へと顔を向け、瞬時にその表情を凍りつかせた。
恐れおののいているようなその顔を見て、私は“まただ”と心の中で呟いた。
昨日、私がこの小花模様のワンピースにすると言った時と、まさに同じ顔なのだ。
「まったく……こんなところにまで呼び出して、いったい何を話すって言うんだ。麻莉をくれとでもいうのか……よりによって、どうして麻莉なんだ。麻莉もなぜ倉渕を選ぶ……すべて俺へのあてつけか!」