独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
恨みが込められているかのような父の苦しげな声音に、恐怖を覚えた。
「パパ!」
身を屈め両手で頭を抱えている父へと美紀が駆け寄っていく。寄り添うように父の背中に手を置くと、今度は私を睨みつけてきた。
「お姉ちゃん! パパが苦しんでるのを見て何とも思わないの? いつまで嘘を続けるつもり!? 遼先輩と結婚する気なんか、初めからないんでしょ!? だったらこんなこと早く終わりにしなよ!」
父の身体がピクリと反応する。
「嘘、だと?」
頭を抱えていた両手が下がっていく。父は背中を丸めたまま、虚ろな瞳で私を見た。
「お姉ちゃんが榊さんとお見合いしたくないから、遼先輩に恋人の振りをしてって頼み込んだのよ! だからふたりは恋人でもなんでもないの! 最初から私たちを騙してたの!」
「……麻莉、どういうことだ」
空虚だった父の瞳が憤りで染まっていくのを目の当たりにし、ぞくりと背筋が寒くなる。
「それは本当なの!? 信じられないわ! 美紀もなぜもっと早く!」
「ママ、それにパパもごめんなさい。私、誰にも言うなって……遼先輩に脅されて言えなかったの」
美紀が薄っすらと涙を浮かべながら許しを請えば、父と母が怖い顔で私を睨みつけてくる。