独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「美紀……やめて」
「榊さんのことで、遼先輩に弱みを握られる形になっちゃったんでしょ? 私、本当は分かってるんだ。遼先輩って、実はとっても冷たい人だってこと。でももう大丈夫。パパが助けてくれる。これでお姉ちゃんは好きでもない人と結婚なんてしなくて済むから」
「美紀、何を言ってるの……違う。そうじゃない。私と遼は――」
「麻莉!」
父の低く唸るような声に、一瞬で場が静まり返った。
「お前はこの部屋から出るな。いいな!」
突きつけられた命令に、喉の奥で小さく悲鳴を上げる。
部屋を出て行く父の背中に、一気に胸が苦しくなっていく。
最悪の状況に陥ってしまったことを肌で感じながら、私は拳を握りしめた。