独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます



「麻莉お嬢さま。お願いですから、しばらく大人しくしていてください」


後ろから目の前へとやってきた斉木さんが、疲労感たっぷりのため息をつく。


「紐を解いて!」

「できません。逃げ出されたら困りますので」

「でも、私行かなきゃ。このままじゃ遼が……」


遼が一方的に責められてしまう。

そう訴えかけようとしたけれど、私の右肩を後ろから押さえつけている手に強い力が込められ、痛みで言葉を切った。


「遼先輩の所に行ってどうするつもりなの? このままここにいれば結婚せずに済むんだから、あとのことはパパに任せておきなよ」


背後を見上げ、美紀をにらみつけた。

私は絨毯の上に両ひざをついた格好で、上から美紀に押さえつけられている。

何度も部屋から逃げだそうとしたけれど、そのたびに美紀と斉木さんが二人がかりで私を捕まえる。

なかなか諦めない私に危機感を覚えたのだろう、とうとう後ろ手で手首を縛り上げられてしまった。

母は父と共に待ち合わせ場所に向かってしまったし、ヘアメイクを担当してくれた女性ふたりもすぐに去ってしまったので、今、部屋の中にいるのは美紀と斉木さんと私の三人だけ。

数の上でも不利で逃げ出すことが難しいというのに、手首を縛られてしまっては余計難易度が高くなる。

方法を失ってしまった気持ちになれば、動く気力もなくなっていく。

その場にへたり込む。ぼんやりと見つめる先には姿見が置かれていた。

鏡は今の自分の姿をしっかりと映していて、泣きたくなってくる。

押さえつけられたり掴まれたりしたため、綺麗にセットしてもらった髪は乱れてしまっている。


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