独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
これから、いったい何が私を待ち受けているのだろうか。
良いことが待っているとは到底思えない。嫌な予感しかしない。
足が重くなっていく。本当に気が進まない。
ファッションブランドのお店に挟まれた細長い通路を抜け、屋外へ出た瞬間、女性の黄色い歓声が耳についた。
なんの気なしにそちらを見て、私は足を止める。
女性たちを騒めかせているのは、路肩に停車している高級車から降り立った男だった。
180センチほどのすらりと細長いその体で、オーダーメイドだろう品の良いスーツを難なく着こなし、秘書を引きつれ颯爽と歩いてくる姿は、明らかに、周囲とは一線を画していた。
周りを気にすることなく前を見つめている精悍な面持ちは己に対する自信だけでなく、女性受けする清潔感、そして甘さまでをも含んでいるから……本当に質が悪い。
自分の斜め後ろを歩く男性秘書へと喋りかけた彼の黒髪が、さらりと揺れた。
私はハッとし、身体を震わせる。
伏し目がちだった大きな瞳が、前触れもなく、こちらへと向けられたのだ。
彼はすぐに足を止める。続けて、軽く手を上げ、秘書にも停止を促した。
目と目を合わせ三秒後、にっこりと、彼が私に笑いかけてきた。
さく裂した美しい微笑みに、周囲の騒めきがより一層大きくなったのを肌で感じる。