独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
そうしたらスマホを手にできる。遼に助けてって電話ができるはずだ。
ふたりにばれない様に、手をもぞもぞさせていると、美紀のスマホが鳴った。
「パパ。どうしたの?……大丈夫。お姉ちゃんはここにいるから」
美紀の目がちらりとこちらに向けられる。私は息と動きを同時に止める。
「ロビーにいるの? そう言えばさっき、遼先輩の到着はギリギリになるかもって、お姉ちゃんが言ってた……えっ、裏口から?……うん。分かった」
通話を終えると、美紀が憐れんだ目で私を見た。
「パパ、お姉ちゃんを倉渕親子にどうしても会わせたくないみたい。万が一、お姉ちゃんをこの部屋から連れ出されたらって不安になってるよ」
言いながら美紀が近づいてくる。私は座りこんだ格好のまま、後ろへと下がっていく。
しかしすぐに美紀の手に掴まえられ、乱暴に顎を持ち上げられた。
「でね。遼先輩たちが到着するよりも前に、このホテルを出なさいって」
目の前で、美紀が楽しそうに笑う。
「ちょっとくらい遼先輩の顔が見れたらいいなって思ってたけど、仕方ないよね。私も遼先輩にお姉ちゃんを渡したくないもん」