独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
違う、逆だ。私に遼を渡したくない。美紀はそう言いたいんだ。
睨みつければ、美紀は楽しさを堪えきれないようにふふっと笑い声をあげ、私から手を離した。
そして、後ろに控えている斉木さんへ振り返る。
「裏口を出たところに車を待機させてあるってパパが。時間もないし、急ぎましょう」
「かしこまりました」
美紀が私の腕を掴めば、斉木さんも素早く動き出す。ソファーにある私のバッグや上着を掴み上げ、横に並んだ。
ふたりに引っ張られ、よろめきながら立ちあがると、斉木さんが私に上着をかけた。
優しさからの行動ではなく、私を後ろ手で縛り上げていることを隠すためだ。
そのまま連行される形で、歩き出す。歩きながら、斉木さんがどちらの手で私のバッグを持っているかちらりと確認した。
私を立たせようと強引に引っ張られたこともあり手首がひどく痛んでいるけれど、それは今の私にとって些細なことだ。
上着をかけてくれたのは好都合だった。右手がもう少しで紐の輪から抜け出せそうなのだ。
ふたりに気付かれないよう注意しながら、私は大人しく歩を進めた。
廊下に出れば、斉木さんが歩調を速めた。