独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
廊下に喜多さんの厳しい声が響き渡った。
斉木さんが美紀の隣へと移動し、美紀と同じように挑戦的な眼差しを喜多さんへ向けた時、突然、動揺の声が上がった。
私たちはそろってハッとさせられる。
十メートルほど先の廊下奥に、喜多さんと同じ清掃服姿の女性が二人、身を寄せ合い立っていた。
右側に立つ女性が小さく悲鳴を上げた。
私が縛られていることに気が付いて、動揺を大きくさせている。
さすがにこのままではまずいと思ったのだろう。美紀が喜多さんを掴みにかかった。
「退いてよ!」
「いえ、退きません!」
喜多さんにきっぱりと断られて、美紀はムッと顔をしかめた。
そして顔色を赤くさせ、右手を大きく振り上げる。
パチンと痛々しい音が響き、私は息をのんだ。
「あんた昔から嫌いだったのよ! 麻莉お嬢様、麻莉お嬢様って、お姉ちゃんばっかり贔屓して!」
頭に血がのぼり我を忘れてしまったかのように、美紀が喜多さんの頬を何度も叩いた。
喜多さんが背を丸め両腕で顔を守っても、止まらない。
「私は麻莉お嬢様のことを自分の娘のように思っております。大切なお嬢様が辛い目に遭わされているのですから、肩入れして当然でしょう。私は何があろうとも麻莉お嬢様の味方です!」