独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
怯むどころか厳しい口調で反論され、美紀の手が止まった。
怒りに満ちた顔で喜多さんを睨みつけ、今度は震え出した両手で勢いよく掴みかかろうとする。
「もうやめて!」
私は勢いよく美紀へ向かっていく。伸ばした手で彼女の右手を掴み、もつれあいながらその場に倒れ込んだ。
拘束が解けた私の手を見て、美紀が悔しげに歯噛みする。
「麻莉お嬢様!」
素早く動き出したのは喜多さんだった。仰向けに倒れている美紀を抑えつけながら、私に“行きなさい”と眼差しで訴えかけてくる。
すぐに心は決まる。私は立ちあがり美紀から離れた。
遼の元に早く行かなきゃと、ただその一心でエレベーターへと全力で走り出す。
「待ちなさい!」
斉木さんが前に立ちふさがり妨害する。
思わず足を止めた私を清掃員の女性がすばやく追い抜き、大きく両手を広げ斉木さんに抱きついた。
肩越しにこちらを見たその人は、さきほど廊下の奥の方で身を寄せ合い怯えていた女性の片割れだ。
彼女が「なんかよくわかんないけど、私たちも喜多に力を貸すわ!」と楽しそうに宣言すれば、続けて後ろからも「早く行きなさい!」と声が上がった。