独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
見れば、もう一人の女性が喜多さんに代わって美紀を抑えつけている。
「ありがとうございます!」
私は喜多さんの仕事仲間に向かって頭を下げた。
斉木さんが足下に落とした自分のバッグを拾い上げてから、走り寄ってきた喜多さんと共にエレベーターへと向かう。
廊下を挟んで両側に二基ずつ、エレベーターが並んでいる。
手当たり次第に呼び出しのボタンを押せば、そのうちの一つが扉を開けた。
「待ちなさい!」
女性を振り払った斉木さんが慌てふためきながらこちらに向かってくるのを目にし、私たちも急いでエレベーターに乗り込んだ。
幸いにも、斉木さんが着く寸でのところで、エレベーターの扉を完全に閉めることが出来た。
一階へと降下するのを身体で感じ、肩の力が抜けていく。
「お嬢様、上着を」
「ありがとう」
「あぁ。麻莉お嬢様。痛かったでしょう。お可哀想に」
差し出された上着を受け取ろうと手を伸ばせば、喜多さんが私の手首を見て泣きそうな顔をする。
「大丈夫。平気だから」
そう言ってみたものの、所々血が滲み出てしまっているこの状態では説得力はないだろう。
苦笑いを浮かべながら、受け取った上着ごと手を後ろにし、その傷を隠した。