独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
父の後ろから母に茶々を入れられ、遼のお父さんがムッと顔をしかめた。
「そう言わなくちゃいけない状況下に置かれているから、言ったまでだろ! お前本当は……麻莉の恋人の振りをしているだけなんだってな」
がしかし、続けて聞かされた父の言葉に顔色を失っていく。まさかと言った表情で、遼を見た。
「私を騙したことも、榊さんとの大事な縁談を潰したことも、今なら目をつぶってやろう。だからもうここで終わりにしてくれ。縁を切れ。麻莉の人生にこれ以上関わるな」
最後に、怒りのこもった言葉を遼にぶつけ、父は深く息を吐き出した。
「話はここまでだ。悪いが食事などする気にならん。帰らせてもらう」
斜め後ろにいる母に「行くぞ」と一声かけ、父は歩き出す。
けれどすぐに、焦りなど全く感じられないほど冷静な声で、「待ってください」と遼が父を呼び止めた。
「麻莉とこれまで続いた縁は、ふたりで長い時間をかけて繋げあわせてきたようなものです。それを今、俺一人の力で断ち切れと言われても、無理な話です。麻莉から直接絶縁したいと言われない限り、俺はいつまでも未練がましく彼女を思い続けてしまうでしょう……そういう気持ちにお心当たりは?」