独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「西沖、お前好きなの頼めよ。なんにも食べてないんだろ?」
「……えっ。いやでも。バッグを置いてきてしまって。お財布が」
「良いって。遼につけとくから、好きなだけ食べろ」
「なんで倉渕君? そんなことしたら、なんで俺がって怒られるよ」
「倉渕くん、超金持ちだから。気前よく出してくれるって」
あははと笑いながら、亜有子(あゆこ)がやってきた。
作務衣姿に、後ろで髪を一つに結わっている彼女が隅田君の妻。そして私の小学校の頃からの友達である。
「とりあえず、これ履いて」
「ありがとう。お借りします」
亜由子は私のために、お店から歩いて5分ほどの場所にある自宅から、スニーカーを持ってきてくれた。サイズからして彼女の物だろう。
好意に甘えようと思うけれど、自宅からここまで靴下のまま歩いてきてしまったので、そのまま履いてしまうのも気が引ける。
かといって、裸足で履くのも違う気がして困っていると、そんな私に亜由子が気づいた。あははと豪快に笑ってから、小声で話しかけてきた。
「実はこれね、お義母さんからのもらい物なんだけど、サイズが小さくて履けないのよ。麻莉だったら、私より足が小さいから履けると思うんだよね。あげるから好きに履いちゃって」
「良いの?」
「良いの良いの……って。あれ? やだぁ。手首のところ、血が出てるじゃない」