独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
ゆっくりとした足取りで席に戻ると、倉渕君が私の手を掴み取った。
「俺と別れてから、なにがあったの?」
すでに救急箱から取り出してあった絆創膏を傷口に貼りながら、静かに問いかけてくる。
答えられずにいると、倉渕君が顔をあげ、ため息を吐いた。
「しかも、違うところも怪我してる。だよな?」
言うなり、彼が私の足首を軽く蹴ってきた。痛みで出かかった悲鳴を必死に堪える。
「……なんでわかったのよ」
「歩き方、いつも以上に変なんだよ」
涙目で睨みつけると、彼も睨み返してきた。
「なにがあった?」
声がちょっと怒っている。
じっと見つめ返せば、彼の瞳の奥で何かが揺らめているように見えてくる。
怒りとは違う感情。それはたぶん、心配。
席から洗面台まで10メートルくらいしか距離が無いというのに、私の変化に気付いてくれた。
心配してくれてる。
彼の思いを無下にできず、私は口を開いた。
「……木から落ちたの」
正直に打ち明け三秒後、倉渕君がぷっと吹き出した。
「猿も木から落ちるってやつ? なんだよ。さっきの話、まだ根に持ってんのかよ」
「違う! 本当の話!」
「……だったら。大人になっても、木登りして遊んでるのか?」