独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「相手は、お前とじゃなくて西沖の家と結婚するんだと割り切っていたら? お前は“妻”という飾りにちょうどいい。そんな風にしか考えていなかったら? お前の中身に興味すら持つ気もなかったら?」
真剣な顔で問いかけてくる。私は息をするのも忘れて、ただ彼を見つめた。
「榊の三男は、女癖が悪いので有名だぞ。見境なく手を出しているせいか、何度も何度も週刊誌を賑わせてる。俺も実際に、レストランで女にひっぱたかれてるのを見たことがある。お前は知らないのか?」
力なく首を横に振った。私はただ“人望も厚く、好青年”としか聞いてない。
しかし、有名だと言うのなら母が知らないはずがない。
知っていたからこそ、榊さんとのお見合いを実の娘である美紀ではなく、前妻の子である私に押し付けてきたのだろう。納得だ。
心が悔しさでいっぱいになっていく。涙が零れ落ちそうになり、両手で顔を覆う。
「言いなりになんてなりたくない! 私、結婚なんてしたくないよ!」
心をさらけ出すように声を上げた瞬間、身体を引き寄せられた。
ぎゅっと、逞しい腕できつく抱き締められた。
「結婚なんてさせない。絶対に」
「……倉渕、くん?」
顔をあげれば、力強く輝く瞳がすぐそこにあった。一気に引きこまれていく。