独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます

そして彼も、優しさの感じられない低音ボイスで、言葉通り、文句を言ってくる。


「大変失礼いたしました」

「分かればよろしい」


私たちは牽制という名の笑みを浮かべながら、ふふふと乾いた声で笑い合った。


「倉渕君、こんにちは。相変わらずお元気そうでなによりです。あら大変。お付きの方が怖い顔でこちらを見てますよ。早く戻ってください。私も行きます。では失礼いたします」


言うだけ言って逃げようとしたけれど、両肩に乗った手に阻まれてしまった。


「俺のお前への挨拶はこれからだ。逃げんな」


白けた目で見つめ返してやると、倉渕君が笑みを消した。

真剣な眼差しで射貫かれれば、急に居心地が悪くなる。

このまま見つめ合っていたら、心の中を読みとられてしまいそう。

急にそんな気持ちにさせられ足元へと視線を落とした私に、「お前さ」と彼が囁きかけてきた。


「昨日から元気ないんだって? お前の所に飯食いに行ったうちの社員が、お猿さんが泣きそうな顔してるって俺に報告してきたぞ。何かあったのか?」


心配。気遣い。優しさ。

彼の声からそれらが伝わってきて、不覚にも胸がキュンとしてしまったけれど、引っかかった言葉が、その全てを帳消しにした。


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