独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「やっぱり俺、お前が誰かのものになるなんて、考えられない……考えたくない」
切なく、苦しそうに彼がそう言った。
声は弱々しくもあるのに、私を見つめる熱い眼差しは、強い決意に満ちているように見える。
声も、表情も、私を包み込む腕も、彼のすべてに心が反応している。
身体にじわりと広がった甘い痺れに、私は身動きも出来ぬまま、ただ彼を見つめ返していた。
周囲の静寂を打ち消すように、キキッと、車のタイヤがブレーキ音を響かせた。
「すみません。発見できませんでした」
続けて聞こえてきた声に、ビクリと肩が跳ねた。
慌てて視線を移動させれば、案の定、駅前のロータリーの一角に停車した車のそばに斉木さんが立っていた。
後部座席に向かって、彼女が何度も頭を下げている。
車内に誰が乗っているのかまでは見えないけれど、彼女が対峙しているのは西沖の車でまず間違いない。
そして斉木さんの様子から言って、車の中にいる人物はおそらく……母で間違いないだろう。
私から斉木さんがよく見えるのだから、斉木さん、もしくは車内の誰かがこちらに顔を向ければ、すぐに気付かれてしまうだろう。
そうなってしまえば、一巻の終わりである。
この温かな腕の中からあの冷たい家の中へと、連れ戻されてしまう。