独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
彼の傍から離れたくない。
強い思いに突き動かされ、彼を掴む手に力を込める。
倉渕君も私の視線の先にいる人物に気が付いたのだろう。
一歩横へと移動し、彼が車へと背中を向ける。
まるで腕の中に隠すかのように、私をぎゅっと抱きしめてきた。
「その縁談、俺がぶち壊してもいい?」
低い声は、力強さと少しの冷淡さを含んでいた。
「そんなこと……出来るの?」
質問に質問を返しながらも、期待で胸がいっぱいになっていく。
「もちろん。俺を誰だと思ってるんだよ。むしろ俺以上に適任な男はいないだろ」
「なにそれ」
ほほ笑む彼の顔はいつも通り自信に満ち溢れている。そんな彼が頼もしくてしかたがない。
それに、これほど真剣に私に手を貸すと言ってくれる人は、この世界で倉渕君だけだろう。
やっぱり彼は、私にとってかけがえのない人だ。
再認識した思いに胸を熱くさせた瞬間、彼が次の一言を放ってきた。
「お前は両親に、倉渕遼が好きだと言えばいい」
「……え?」
「倉渕のとこのひとり息子と付き合ってる。いずれ結婚したいと思ってる。そう言ってやればいい」
「く、倉渕君と?」