独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
閉じるエレベーターの扉の向こう側から慌てた声も聞こえてきて、私は両手で耳を塞ぎ、ぎゅっと目をつぶる。
乗り込んだエレベーターが静かに下降し始めた。
「倉渕君、ごめんなさい」
そもそも私が間違っていた。
誰かに頼らず、自分で解決すべき問題だったのかもしれない。
彼に甘え過ぎていたと反省しながらホテルのロビーを進んでいく。
見上げた視線の先には大きな柱時計がある。朝の8時。まだまだ今日は始まったばかり。
これからどうすべきだろうか。
これ以上、逃げ回るのも難しい。
嫌だけど、西沖の家に戻って物事に向き合うべきかもしれない。
ホテルから外に出ると、実家のある方向へと足を向ける。とぼとぼと歩き出す。
「やっと見つけました」
突然、後ろから乱暴に腕を掴み取られ、私は小さく悲鳴を上げた。
振り返ればそこには斉木さんがいた。不機嫌な眼差しに、ぞくりと背筋が寒くなる。
「麻莉お嬢様。まったく、こんなところに隠れていらっしゃるとは。どうりで見つけられなかったわけです」
斉木さんはホテルを見上げながら愚痴をこぼした。
私は余計なことを聞かれたくなくて黙りこむ。
「おかげで、昨日からずっと奥様のご機嫌が……まぁ、良いです。今ならまだ間に合いますから」