独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
言うなり、斉木さんは私の腕を引っ張り歩き出す。
「私は、結婚なんかしたくないです」
「まだそんなことを? いい加減にして下さい」
自分の思いを主張したけれど、それは大きな声で一蹴されてしまった。
連れてこられた先には、昨日見かけたのと同じ車が停められていた。
斉木さんは後部座席のドアを開けると、そのまま私を車の中に押し込もうとする。
反発心は生まれたけれど、抵抗はしなかった。
逃げずに戦わなくちゃ。
車に乗り込んでから、大きく息を吸い込み、覚悟を決める。
すぐさま斉木さんも私の隣に座り、車が動き出した。
斉木さんが不機嫌な顔でため息を吐き続けているから、車内の空気はすこぶる悪い。
居心地が悪くて、私はそっと自分の身体を抱きしめた。
倉渕君の腕の中にいた時とは大違いである。
昨晩、私は幸せだった。改めてそう思う。
ちょっぴり悲しくなってしまい、ついホテルを振り返り見て……ドキリとする。思わず座席から腰を浮かしてしまった。
入口近くに、倉渕君がいた。誰かを探すように、辺りを見回している。
探しているのは……たぶん私だ。
必死な様子に、思わず涙が込み上げてくる。