独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます


「どうかなさいましたか?」

「いえ。なにも」


斉木さんが振り返りそうになったため、私は強く否定する。

一人で立ち向かうと決めたのだ。

座席に座り直して、真っ直ぐ前を見た。

思い浮かべそうになる、彼のちょっぴり意地悪な笑みや、昨日私にくれた甘い優しさ、そしてさっき見てしまった焦り顔を、必死に心の奥底に隠したのだった。



+ + +



重苦しい静寂に包まれたまま、どこに立ち寄ることもなく、車は西沖家へと到着した。

斉木さんに連行されるような格好で車から降ろされ、玄関へと向かって歩いていく。

そのまま母の前へと連れて行かれるものだと思っていたけれど、舞い戻った先は、数時間前に逃亡を図った自分の部屋だった。

しかし早々に、その時には部屋に無かったものを二つほど見つけてしまった。

一つは、無造作にベッドの上に置かれているノースリーブのワンピース。

ベルベッドの白地に灰色の花柄があしらわれている。品の良さそうな一着だ。

その隣には、その上に羽織るのだろうグレーのカーディガンも置かれている。

もう一つは鏡台のまえにはメイク道具。ピアスやネックレスも並べられてある。

これらはもしかして、もしかしなくても……。


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