独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「なに!? お猿さんってなに!? それ私のこと!?」
「俺とお前って、周りから犬猿の仲みたいに思われてるじゃん。だから俺が犬でお前が猿ってことになってる」
「なんで私が猿なのよ!!」
「イメージそのまんま」
引っ搔いてやりたいのをぐっと堪え、私は自分の肩に乗っている彼の手を思い切り振り払う。
睨みつけつつ、背を向け歩き出したけれど、三歩進んだところで、また腕を掴み取られてしまった。
「西沖、今日はもう仕事終わったんだよな?」
「そうだけど?」
うんざりと返事をし振り返れば、倉渕君が腕時計で時間を確認していた。
「今五時すぎか……そうだな。俺もあと一時間半あったら、仕事片付けられるかな」
何が言いたいのか掴めなくて首を傾げると、再び、彼が私を見た。警戒心がうまれ、身体に力が入ってしまう。
「俺の仕事が終わるまで、少し待たせることになるけど……今夜、ふたりで飯でも食いに行かないか?」
「……ふ、ふたりで?」
「あぁ。ふたりで」
驚きで目を見開いてしまった。
食事には何度か行っている。けれど、ふたりっきりでは一度もない。いつも誰かが一緒だった。
自分が誘われたことに驚いてしまったけれど、それよりももっと驚いてしまったことがあった。