独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます


「着替えてください」


業務命令のような口ぶりで、斉木さんが私に言った。


「嫌です」


ぎゅっと拳を握りしめ、斉木さんを見ないままに私はそれだけ言い返した。

目の前にあるこれらが見合いの場に行くために準備されたものだと言うならば、私は断固として拒否する。


「聞き分けのないことを言うのは、もうお止めになったらいかがですか? あなたは今から榊様とお会いになる。これは決定事項なのですから」

「……嫌です」


なんと言われようと、私は見合いなんかしない。

斉木さんと睨み合っていると、乱暴に部屋の扉が開かれ、母と喜多さんが室内に入ってきた。

母は途中で足を止め、私の顔を見つめたまま不快感たっぷりのため息を吐く。

威圧感に怯みそうになったけれど、私は唇を噛みしめつつ、なんとか気持ちを立て直す。

しかし、こちらに走り寄ってきた喜多さんの様子に気が付いた途端、張りつめていた気持ちが緩みそうになってしまった。


「麻莉お嬢様。昨晩はいったいどちらに? 心配したんですよ」


喜多さんは私の前までやってくると、優しくも泣きそうな声で話しかけてくる。


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