独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「……麻莉お嬢様」
苦しそうな顔で、喜多さんが私の腕に触れてきた。私は黙って微笑み返す。
喜多さんの視線がそっと下に降り、僅かに目を見開いた。
「お嬢様……もしかして……昨日は誰かと一緒だったのですか?」
まさかの質問に、私も目を大きくしてしまう。
「……そ、そうだけど」
「首元に……」
喜多さんが私に一歩近づき、私の首のあたりを見つめながら、己の首を指さした。
「え?」
何が言いたいのかすぐには分からなかった。
しかし、ふっと思い出してしまった記憶に、心の中は“まさか”でいっぱいになっていく。
慌てて鏡へと向かう。
自分の首にある赤いしるしに気付いてしまえば、苦い顔になってしまう。
首元にあるのは、キスマーク。
昨日、倉渕君が私につけたものだ。
恥ずかしさと焦りで軽くパニックになってしまったのに、鏡越しにまだ室内に留まっていた母と目が合ってしまえばなおさら、気は動転してしまう。
「……麻莉」
名を呼ばれ、私は咄嗟にキスマークを手の平で覆う。
「まったく見苦しいわね。化粧でしっかり隠して」
忌々し気に息を吐きつつ、母は自分の近くに控えていた斉木さんにそう命令した。