独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
全てを裏切られたような気持ちになる。目の前が真っ暗になった。
「……お父さんは、私が見合いをする榊さん本人と親しい仲なの?」
込み上げてくる怒りや父に対する失望をなんとか飲み込みながら、やっとの思いでそれだけ確認する。
「親しいと言うほどでは……だが、典英君とは何度か顔を合わせているし、なにより彼の父親は素晴らしい男だ。アイツの息子なんだ。間違いはない」
父の返答を聞き、話にならないと思った。
先の言葉がその人となりを知っているからこそ出た言葉ならまだ良かった。
しかし、そうではないというのなら話は違う。
父にとって都合のいい言葉を並べただけにしか思えなくなってくる。
「このような一方的なやり方で麻莉お嬢様が榊さまと結婚し、幸せになれると……旦那様は本気で考えていらっしゃるのですか?」
疑問を覚えたのは私だけではなかったらしい。
喜多さんが声を震わせながら、しかし、どことなく責めるような口調で父に問いかけた。
「何が言いたい」
父が眉間のしわを深くする。
しかし喜多さんは悲しげな顔をしたまま、視線を上げようとはしなかった。
「……いえ。何も……私はただ……奥様のことを思い出しただけです」