独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
行きたい。真っ先にそう思ってしまったのだ。
けれど、今夜の予定はすでに埋められている。そのことを思い出してしまえば、一気に気持ちがしぼんでいく。
「……ごめん。今日はこれから予定があるの」
「そっか。予定があるなら仕方ないか。また誘えそうな時、誘うわ」
倉渕君の声から、がっかりしていることが伝わってきた。
申し訳なさで胸がいっぱいになれば、自分自身も同じようにがっかりしていることに気付かされた。
ちょっぴり泣きたくもなってくる。
「また誘ってね……楽しみにしてるから」
「あぁ。分かった」
驚きとか、切なさとか、憂鬱さだとか。
込み上げてくる感情を必死に押し隠そうとしたけれど、うまくいかなかった。
小さなため息を吐いてしまったその時、腕を掴む倉渕くんの手が、ぴくりと反応した。
「西沖?」
彼が私の顔を覗きこんできた。
いきなり顔と顔の距離が近くなったことに、変な緊張感が湧き上がってくる。
「お前やっぱり、なにか困ってるよな?」
再び向けられた真剣な瞳に、鼓動が加速する。目を合わせ続けることもできなくなり、私は早々に顔をそらした。
いつも彼はこうだ。
普段は私のことを馬鹿にしてくるくせに、こういう時だけ心の機微を敏感に察知し、直球で問いかけてくる。
落ち着かなくなるほど、優しく私を見つめてくる。