独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
榊さんが私の肩に手を乗せ、言いきかせるように顔を覗きこんでくる。
首を横に振り、身を捩った時、横から伸びてきた手が榊さんの腕を捉えた。
「いや。あなたでは、麻莉を幸せにできない」
聞こえた声にハッとする。
「彼女を幸せにできるのは、この世で俺だけだから。誰にも渡さない」
涙で滲んだ視界の中に、彼がいた。
「……遼っ!」
遼が目の前にいる。
置き去りにするような形で逃げ出してしまったというのに、彼は私の所に来てくれた。
私の肩から榊さんの手を引き離した後、遼が私の手を掴み取った。
そのまま彼の腕の中へと引き寄せられる。
「まったく、お前は」
ほんの少しの間、私を強く抱き締めた後、彼は腕の力を弱め、ため息交じりに囁きかけてきた。
「一人で抱えこもうとするなよ」
「……ごめんなさい」
彼の胸元に顔を埋めながら、私も言葉を返す。
優しく撫でてくれる優しい手も、伝わってくる体温も、どうしようもなく心地よい。
「もう大丈夫だから」
じわりと心が温かくなる。心が嬉しがっている。
大丈夫。
その言葉が、こんなにも欲しかったのだと気付かされる。
彼の存在を、心から愛しいと思った。