独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます


「麻莉、その男から離れろ!」


榊さんの荒々しい声に思わず身体を強張らせると、遼が私を抱き締め直してきた。


「無理だよ。俺が麻莉を離さない」


遼がきっぱりと言い放つ。

狙い澄ますような遼の鋭い眼差しや、凛とした言葉の力強さに、榊さんは怯んでしまったらしい。

言いよどんでしまった彼の代わりに、母へと歩み寄った妹の美紀がテンション高めに話し出した。


「嘘っ! 遼先輩だよね!? 本物だよね!?」

「遼先輩? 彼を知ってるの?」

「知ってるに決まってるじゃん……あの遼先輩がお姉ちゃんと!? 信じられない!」


目を輝かせ続ける美紀を見て、母は遼に興味を持ったようだった。探るような視線を何度も遼に向ける。

そんな母と娘に呆れ顔をしながらも、父が遼に対し咎めるように言った。


「どこの誰だか知らんが、突然現れて無礼だぞ。うちの娘を離しなさい!」


遼は私から腕を解くと、そのまま私の横に並び立った。

そして、待ってましたとばかりに笑みを浮かべ……。


「自己紹介が遅れました。倉渕遼と申します。麻莉さんとは、結婚を前提のお付き合いをさせていただいております」


得意げな顔をしてそう言った。


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