独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「はっ。倉渕?」
遼の名を聞いて榊さんが嘲笑う一方、父は顔色を失っていく。
「……倉渕」
明らかに動揺している。
誰かの面影を探すかのように遼の顔をじっと見つめてから、こいつはいったい誰なんだと震える瞳で私を見た。
「あぁ、そう言えば以前、西沖さんとは学生の頃からの知り合いだと父に聞いたことがあります……覚えていらっしゃいますか? 父の、倉渕吉博(よしひろ)を」
とどめを刺すように、遼が父親の名前を口にし、自分の素性を明かした。
効果はてきめんだった。父の表情がどんどん歪んでいく。
そして母もまた、その言葉で彼が誰なのかを理解し、目を大きくさせる。
「それじゃあ、あなたは倉渕物産の……」
「……えっ。倉渕物産?」
社名と苗字が一致した瞬間、榊さんはその顔に浮かべていた笑みを引っ込めた。
空気を一変させるように広がった動揺に、私は改めて倉渕物産という名が持つ力の巨大さと、その跡取りという立場にいる遼の存在の重みを実感していた。
彼は本来ならば、こんなくだらないもめごとに巻きこんでいい人ではない。
そう頭ではわかっているのに……。
「本当に倉渕の息子なのか?……倉渕の息子と麻莉が……」