独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
私は隣に立つ遼の手をきゅっと握りしめ、父の問いかけに頷き返した。
「遼のことが好き。私はこれからもずっと、彼と一緒にいたい」
それは本心だった。だからこそ、声が震えてしまった。
私にとってずっと、倉渕遼は追い抜かなくちゃいけない存在だった。
けれど、追いつくことすらできなかった。
彼の優秀さを目の当たりにし続けてきたからこそ、私には手の届かない存在という気持ちが心の奥にあったのだ。
恋愛の面でも同じように思っていた。
手は届かない。遠い存在。
だから彼に恋なんてするわけない、彼も私を好きになるはずがないと。
けれど彼の優しさや温もりを知り、自分の気持ちを自覚してしまえば……私はもう引き返すことなどできなかった。
「……麻莉」
遼が私の名を呼んだ。驚きに満ちた顔で、私を見つめている。
ふりだと分かっているのに、恋人として遼に大切にされている今この瞬間がたまらなく嬉しい。
そう言ったら、遼はどんな顔をするのだろうか。
本気になるなよって、馬鹿なヤツだなって、困った顔をするだろうか。
涙を浮かべた私に、彼が苦笑いする。
想像した通りの顔をされてしまい膨れっ面になれば、彼の両手が私の頬を包み込んできた。