独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「麻莉……っ」
しかし彼の言葉は続かない。榊さんが遼の胸元をきつく締めあげたのだ。
「ここまでだ。これ以上、しゃしゃり出てくるようなら容赦しないぞ」
遼が苦しそうに顔を歪めたのは、ほんの一瞬だった。
すぐに自分の胸倉を掴む相手へと、挑戦的な眼差しをむける。
「なんて言われようと考えは変わらない。麻莉は俺が連れて帰る」
遼の圧力に押されれば、今度は榊さんが表情を歪める番となる。
「お前……本当に目障りなんだよ」
五センチほど遼の方が榊さんより、背が高い。
そのため怒り心頭で唇を震わせている榊さんを上から見下ろす形で、遼が口を開いた。
「俺もお前が嫌いだ」
おまけに小馬鹿にするような笑みまで浮かべている。
憤慨し、榊さんの顔がみるみる赤くなっていく。左手で遼の胸元を掴んだまま、握りしめた右手の拳を、大きく振りあげた。
「遼!」
殴られる。たまらず彼の名を叫んだ瞬間、誰かが榊さんの腕を横から掴んだ。
「それはさすがにやりすぎでは?」
榊さんの拳は、遼の鼻先で停止している。
完全に榊さんの力を抑え込んでいるのは、遼の秘書のあの男性だった。