独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
彼は冷めた目で榊さんを見つめ、榊さんは怒りに満ちた目で遼を見つめ、遼もその状態に少しも動じることなく榊さんを睨み返している。
何かを感じたように、遼が私を見た。
と同時に、遼たち三人が放っている緊迫感にハラハラしていた私の隣で、うんざりとしたため息が吐き出された。
気をとられている間に、母が私のすぐそばにまで来ていたのだ。
「その通りですね。公衆の面前で暴力はいけないわ。あなたはこれから西沖と縁を結ぶつもりでいるのでしょう? 恥じぬ行動を」
苛立ちを見え隠れさせながらの母の忠告に、榊さんがぐっとくぐもった声をあげた。
その瞬間、榊さんにできた隙を遼は見逃さなかった。自分の秘書へ目で合図を送ると、秘書の男性も心得ているようにすぐに行動を起こした。
秘書の男性に右手首を捻り上げられ、榊さんはたまらず痛みを訴え始める。同時に力の弱まった榊さんの左手を、遼は自分の胸元から払い除けた。
完全に遼が自由になってしまったことに母も危機感を覚えたのだろう。私を掴もうと、慌てて手を伸ばしてきた。
「行きますよ!」
足をもたつかせながらも、なんとか身体を後退させ、私は母の手を逃れた。
「私は遼と一緒に行きます!」
「麻莉! あなたは典英さんと結婚する身。彼とは元々ご縁がなかったのです。諦めなさい!」