独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
思わず足を止めそうになれば、遼に肩を抱き寄せられた。
「麻莉、止まるな」
「……でも」
「止まれば、彼女の覚悟が無駄になる。色々なものを背負うことになろうとも、前に進み続けるべきだ」
確かにそうだ。けど喜多さんを巻きこんでおいて、ここにひとり置いていくことも心苦しい。
不安に瞳を揺らせば、「麻莉」と遼が優しく私の名を呼んだ。
「大丈夫。俺がいる」
そう言って、彼は余裕たっぷりの笑みを浮かべた。
「ちょっとあなた! こんなことして、どうなるか分かってるの!?」
「えぇ、分かっておりますとも。とっくに心は決まっております。ご縁がないなんてよく言えること! 私は今、運命というものを目の当たりにした気持ちでいますよ」
聞こえてくる母と喜多さんのやり取りに唇を噛みしめていると、遼が私に耳打ちしてきた。
「大丈夫。俺の秘書を残してく。彼は優秀だから、なんとかするだろう」
振り返ったら気持ちが揺らいでしまいそう。だから私は遼だけを見つめて、返事をした。
「……うん、分かった。遼のこと信じる」
肩から離れた彼の手が、再び私の手を掴み取った。
笑みをかわし、繋いだ手に力を込める。
私たちは夢中で駆け抜けていく。